『魯肉飯のさえずり』温 又柔 中央公論新社

 『魯肉飯(ロバプン)のさえずり』
温 又柔(おん ゆうじゅう)
中央公論新社

(あらすじ)
母は、わたしの恥部だった――
申し分のない夫・聖司と結婚し、〈ふつう〉の幸せになじもうとするも、にわかに体と心は夫を拒み、性の繋がりも歪になっていく――
密かに声を殺して生きた子ども時代の〈傷〉に気づくとき、台湾の祖母、叔母、そして異国に渡った母の一生が心を揺らす。
夫と妻、親と子それぞれの〈過ち〉を見つめる心温まる長編小説

(感想)
夫婦、となるとどうして通じあえると思ってしまうんだろう。
台湾人の母と日本人の父のあいだに生まれた主人公の桃嘉の苦しみが、読んでいて辛い。
男女となると運命の人、ことばなんていらない…わけじゃない。
親友の茜との関係と同じだよ、しっかりして、と語りかけたくなってしまうのは、子どもこそいないがわたしがおばちゃんになってきたからだろうか。
桃嘉の若さがもどかしく、瑞々しい。
『ことばがつうじるからって、なにもかもわかりあえるわけじゃない』

(書籍詳細は画像をクリックするとご覧いただけます)

著者プロフィール
温 又柔  (オンユウジュウ)  (著/文)
1980年、台湾・台北市生まれ。3歳の時に家族と東京に引っ越し、台湾語混じりの中国語を話す両親のもとで育つ。2009年「好去好来歌」ですばる文学賞佳作を受賞。15年『台湾生まれ 日本語育ち』で日本エッセイスト・クラブ賞受賞、17年『真ん中の子どもたち』で芥川賞候補となった。その他の著書に『来福の家』『空港時光』、エッセイ集『「国語」から旅立って』などがある。

コメント