『バグダードのフランケンシュタイン』 アフマド・サアダーウィー(著),柳谷 あゆみ(訳)

 『バグダードのフランケンシュタイン』
アフマド・サアダーウィー(著),柳谷 あゆみ(訳)
集英社

(あらすじ)
<中東×ディストピア×SF小説>
連日自爆テロの続く2005年のバグダード。
古物商ハーディーは町で拾ってきた遺体のパーツを縫い繋ぎ、一人分の遺体を作り上げた。
しかし翌朝遺体は忽然と消え、代わりに奇怪な殺人事件が次々と起こるようになる。
そして恐怖に慄くハーディーのもとへ、ある夜「彼」が現れた。
自らの創造主を殺しに――

(感想)
死体から切り出した肉で作られるつぎはぎの「名無しさん」がバグダードを更なる混沌の
渦へ沈めていく。
人名に慣れなくてメモと本文を行きつ戻りつで読むのが大変だった……
ひとりの人間の形成される人格や、国家でさえも、それはつぎはぎなのだ。
あらゆる宗教や政治の手が介入したイラクはつぎはぎの「名無しさん」だ。
怒りと恐怖とあきらめが漂う。
図太くあるか、ずるく生きるか、ここから逃げるか。
不気味なぬめりを感じる本だった。

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【著者略歴】
アフマド・サアダーウィー
イラクの小説家、詩人、脚本家、ドキュメンタリー映画監督。2009年、39歳以下の優れたアラビア語の作家39人を選出する「ベイルート39」に選ばれる。2014年に『バグダードのフランケンシュタイン』で、イラクの作家としてはじめてアラブ小説国際賞を受賞。本書は30か国で版権が取得され、英語版がブッカー国際賞およびアーサー・C・クラーク賞の最終候補となった。現在バグダード在住。

【訳者略歴】
柳谷あゆみ (やなぎや・あゆみ)
1972年東京都生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学。公益財団法人東洋文庫研究員、上智大学アジア文化研究所共同研究員。アラビア語翻訳者、歌人。
歌集『ダマスカスへ行く 前・後・途中』にて第5回日本短歌協会賞を受賞。
訳書にザカリーヤー・ターミル『酸っぱいブドウ/はりねずみ』(白水社エクス・リブリス)、サマル・ヤズベク『無の国の門 引き裂かれた祖国シリアへの旅』(白水社)など。

【英語版タイトル】
FRANKENSTEIN IN BAGHDAD

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