複眼人/呉明益(KADOKAWA)

 『複眼人』
呉明益・小栗山智 訳

(あらすじ)
次男が生きられぬ神話の島から追放された少年。自殺寸前の大学教師の女性と、山に消えた夫と息子。母を、あるいは妻を失った先住民族の女と男。事故で山の”心”に触れた技術者と、環境保護を訴える海洋生態学者。
傷を負い愛を求める人間たちの運命が、巨大な「ゴミの島」を前に重なり合い、驚嘆と感動の結末へ向かう。

(感想)
台湾と、架空のワヨワヨ島、ゴミの島が主な舞台である。
架空のワヨワヨ島の物語は美しい神話のよう。
海にまつわる挨拶。海にまつわることわざ。

そして台湾。
少数民族のスタンスは、台湾に興味を持つ人ならば少なからず見聞きしてきただろう。

海洋ゴミ。
限られた台湾の資源。
気候変動。
山に魅入られた男。
夫婦と、子ども。
海獣を殺し、食べる、人間。

美しい想像の世界と、様々な問題がからみあう現実世界が、
対比されるわけではなくゴミの島のように
ひょっとすると現代アートの一部のように
ビビッドに描かれる。
ため息をつきながら、それでも生きていかなければならない。
諦めながら、逃げながら、立ち向かいながら、
どう生きるかを登場人物たちが見せてくれる。

読むと『複眼人』になる、気がする。

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